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1票の格差 違憲 選挙無効 選挙区 








「1票の格差」が最大で2.43倍だった昨年12月の衆院選を巡り、弁護士グループが選挙の無効を求めた訴訟で、広島高裁岡山支部=片野悟好(のりよし)裁判長=は26日、岡山2区の選挙を違憲で無効とする判決を言い渡した。1票の格差を理由に無効とするのは25日の広島高裁判決に続いて2件目。広島高裁判決と異なり、無効判決の猶予期間は設けなかった。ただ、無効の効果は判決確定以降に限り、それまでの議員活動の正当性を担保する解釈も示した。被告の岡山県選管は上告するとみられる。(毎日.jp)

昨年12月に行われた衆議院議員選挙に関して、この選挙を無効とする高裁判決が立て続けに下された。

3月7日に下された東京高裁の判決に関する記事を書いた時、「この国のガバナンスの一大事に対してすら、煮え切らない、逃げ腰な姿勢を続ける裁判所の限界が浮き彫りになっている」と批判したが、この点を大きく超える勇気ある判決である。

その1つ、昨日(3月25日)に下された広島高裁の判断は、選挙をいきなり無効としてしまうとその選挙を是正する国会議員がいなくなってしまうという問題に対して、一定期間経過後の将来(この判決では平成25年11月26日としている)から効力を発生させると判断した。これは上記の東京高裁が指摘だけした点を現実に適用したもので、より踏み込んだ勇気ある判断だった。

そしてこれに続いて、本日(3月26日)広島高裁岡山支部でも無効判断が下された。この判決は、広島高裁自体が設定した猶予期間を明言せず、この判決の効力が確定した時点で無効となる、という”より強いメッセージ”を発している。

(上告され最高裁の判断が行われることになるので判決の効力が確定するのは、最高裁の判断が遅れれば、広島高裁の指定した平成25年11月26日よりも遅れる可能性もある。したがって、あくまで”メッセージ性”という意味において強いといえよう。)

いずれの判決も、「怠慢であり、司法の判断に対する甚だしい軽視というほかない」(岡山支部)というような国会に対する痛烈な批判を含んだもので、裁判所の強い怒りを感じさせる。”この問題を解決できるのは直接的には裁判所しかいない”という責任をしっかり受け止めた内容となっている。

ーーーー課題はーーーー

ある意味”完勝”ともいえる結果の判決ではあるが、見えてくる課題が2つある。正直、「課題」というよりも日本のガバナンスが成熟する上で通らなければならない必要な「過程」といったほうがよいかもしれない。

1つは、国会が本当に無視した場合どうなるのか?という問題である。

国会議員が法的には存在しないというアナーキーな状態が生じうるわけで、法治国家としての袋小路に陥る可能性がある。この問題に憲法は答えを持っていない。アメリカでは裁判所が暫定的な区割りを決めるという形でこの問題を乗り越えたが、そういったことが必要となるような局面を迎えるかもしれない。

もう1つは、何度も述べているが、投票価値の等価値性についての基準を裁判所は示していないという問題である。

国会は、常に政治的な存在であり自らの選挙区割りの制定に政治的な要請が強く働く。わかりやすく言えば自分が当選しやすいような区割りを作りやすいということである(少なくとも自分が受かった区割りを変えたくないとか)。そういう意味では投票価値の等価値性をどの程度守らなければならないかを裁判所が示すことは、裁量の枠を決める重要な仕事であるはずである。

現状の裁判例は、古い学説でも有力であった一人二票にならなければ良いというような傾向が見て取れる。しかし、本当にそれでよいのだろうか。二票までなら良いという根拠はなんなのだろうか。多い人から見たら少ない人は一人0.5票しかないことになってしまう。結果国民レベルでは多数決と言えなくなるような事態も生じうる。限りなく一人一票に近づけるような選挙区割りは十分に実現可能なのである。

この問題に裁判所は未だに答えていない。

いずれにしても今回、一人一票の問題は大きく一歩前進した。だからこそ、この残りの課題が期待されてくる。日本のガバナンスが成熟する上で通らなければならない必要な「過程」として。






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